英語と格闘するオタクの妄言

昔から日本語が好きで、日本語以外の言語に対する興味が希薄だ。

英語教育に力を入れていると謳う中高一貫校を卒業して身に着けたのはプレゼン中言葉に詰まったときに英語っぽく唸りながら時間を稼ぐ方法だけだったし、大学もうっかり国際系の学部に進学してしまったばっかりに次々と留学へ飛び出していく同級生を横目に4年間同じ教授の講義に通い詰め日本語ばかりを捏ねくり回して卒業することとなった。厳密に言うと卒業論文は日英対照をしながら書いたが、最後まで英語のことがよくわからなかったので、〆切を若干過ぎてほうほうの体で教授に提出したのはふわふわお気持ちポエムだった。

一応日本語以外の言語を学びたいという気持ちが湧くこともあって、大学では必須でもないフランス語をとってみたりもしたが、フランス語の「語頭のhは発音しない」という特性と「r」の発音の難易度によって自分の名前すら満足に発音できず、自己紹介もまともにできないまま脱落してそれきりになってしまった。

 

専門用語の少ない文章であればある程度読める。私は小さい頃から「前後文脈から推測して文章の大意を掴むことで知らない単語を適当に誤魔化す」ことがやたらと得意だったから、TOEICくらいまでのレベル感の長文読解であれば(少なくとも学生時代は)それなりの精度でできた。

中高時代に嫌というほどネイティブスピードの英語を聞かされたせいでリスニングも多少はできる。あくまで「多少は」であるけれど、英語しか話せないお客様が来ても、とりあえず要望は大体わかる程度には聞き取れる。

しかしながら実生活においては当然ながら聞き取れたところで返事ができなければ意味がない。そんなわけで私の英語力は「人並みに読めるし多少は聞き取れるがアウトプットが壊滅的」という、ペーパーテスト以外で全く役立たないレベルのまま停滞していたし、それでいいと思っていた。英語を今後の人生で使うビジョンが全く見いだせなかったからだ。

 

しかし今、私は拙いなりにもたもたと英語を勉強している。

推しの言葉を理解したい。全てはその一心からである。

 

推しと書いたが知ってから日が浅すぎるので推しと呼ぶのは早計な気がする。ここでは単に「彼」と呼ぶことにしよう。

彼を知ったのは、フォロワーのツイートからだった。

「あのさフォロワー、23秒だけ私に時間くれない?」という一文と共にツイートされた動画は、Youtubeの配信を切り抜いたものであるようだった。

私は2年ほど前から某Vtuberのオタクをしている。俗に言うつよいおたくではないにせよ、細々とスパチャをし、グッズを購入し、いわゆる現場があれば可能な限り現地に赴いたり、配信を視聴したりしている。たぶんそのVtuberのオタクの中では中堅以下の位置付けだと思うが、おかげさまでオタクの気持ち悪さ以外には辟易することもほとんどなく、楽しくウキウキと追いかけられている。

そのVtuberのことを教えてくれたのが件のフォロワーだったものだから、何の迷いもなく動画を再生した。再生して、息を呑んだ。

フォロワーの趣味は正しい。紹介されていた彼は、マジで、めちゃくちゃ、ものすごく、非常に、可愛かった。

なるほどね、と、助けてくれ、を反芻しながら、私は特にためらいもなくYoutubeで彼の名前を検索した。

 

全部可愛かった。

 

感心するほどに好みの男だった。面白すぎる。たとえ彼がVtuberでなく、ソシャゲの実装キャラだったとしても、私は彼のことを好きになるだろうな、と思わざるを得ないほど好きなタイプの男だった。

とはいえ配信者を追いかけるのは大変だ。私という人間はひとりで、同時に複数の配信を見ることは不可能ではないにせよかなり難しいし、長時間配信が続くとアーカイブを追いかけるのも厳しくなってくる(ひとりの人間に与えられた1日は平等に24時間なので)。

だからとりあえず切り抜きをたくさん見て今後の進退を考えようと思って、親切にも日本語字幕をつけてくれている切り抜きのひとつを開いた。

その切り抜きは彼の視聴者の中で一番多いのが(彼がほぼ全くと言っていいほど日本語を話せないにもかかわらず)日本人だと言うことに言及している場面のもので、彼は「日本人リスナーには申し訳ないと思っている、日本語も少しずつ勉強する」というような旨の発言をしていた。

 

いやそれはおかしい。彼の優しさは嬉しいけれどおかしい。

彼の母国語は英語で、英語で配信することを前提に雇われている配信者なのだ。それならどう考えても努力をするべきはこちら側だろう。どう考えても中学校から大学まで10年間も英語を勉強したくせに彼の配信の内容が3分の1くらいしかわからない私が悪いし、コメントのひとつもまともに打てない私が悪い。

そう思い始めたら我慢できなくなって、フットワークの軽い友達を引きずるようにして閉店間際の書店に駆け込んだ。大学受験の頃以来まともに触りもしなかった参考書の棚に向かって、ネットで評判のよかった単語集を買った。

 

好きだというなら投資すべきだし、努力すべきだ。

金を出さずに、彼の言葉をわかるようになる努力もせずに、好きかも~♡と宣うような茶の間が一番嫌いだから、彼の優しさにあぐらをかきたくなかった。

 

Section45まである単語集を15日間で1周して、学生時代に使っていた文法の参考書も買い直した。

わかっていると思っていた事項がほとんどわからなくて、彼のツイートもまともに読めなくて、結構訛っている彼の配信は半分聞き取れたら御の字で、わからなくて詰まるたびにネットで調べたり泣きわめいたりしながら今も細々と勉強を続けている。

私は引くほど不真面目な学生で、センター試験当日も会場で剣戟!月光浪漫の歌劇を走っていたので、おそらく今人生で一番真面目に英語を勉強している。

 

彼のことが結構好きだ。推しと呼ぶには好きだと思ってから日が浅すぎるけれど、かなり、だいぶ、好きだ。これからも応援出来たらいいなと思う。

応援していく中で、英語の勉強も続けて、彼の配信をリアルタイムで理解して、彼に気軽にスパチャが送れるようになるといいなとも思う。もしかすると彼が日本語の勉強をして、簡単な日本語のコメントなら拾ってくれるような、そんな日が来るのかもしれないけれど、彼の言葉を、彼のアクセントで聞き取れるようになりたいなと思う。

 

いつか彼がVtuberではない誰かになる日が来るとして、その時までにはちゃんと彼の言葉で追いつけるように頑張るので、どうかすぐには舞台を降りずに私を待っていてほしい。そんな願いが本人に届くわけはないので、これはあくまでオタクの妄言だけれども。

 

www.youtube.com

16分割パーソナルカラー診断を受けてきた自称ド黄ばみ女の話

パーソナルカラーという概念を知ったのは、確か高3の頃だったと思う。
当時から化粧品が好きだった私は、大はしゃぎで数ある自己診断のうちのひとつに挑み、自分はイエベ春に違いないという確信を得た。
私の肌は普通に黄色いし、色白か色黒かに強引に二分するなら色白の部類に入るとはいえ白さの度合いが知れている。透き通るようなピンク肌の女の子がブルベなら、私はイエベだ。間違いない。
そう思った私は喜び勇んでイエベ春カラーのコスメを買い込んだ。オレンジのことは好きになれなかったので、リップを選ぶ時はコーラルピンクをよく探していた。
いやまぁこんなに黄ばんでる女がブルベなわけないよなwwwと思っていたのでブルベ向けと呼ばれるコスメはとことん避けた。

 

その判断に疑問を抱きはじめたのは、大学2年生の頃だったと思う。
世界一かわいい捨て色なしパレットじゃん!と思っていたバレンタインボックスが、いざ瞼に載せてみるといまいち似合わなかったのだ。いまいちというか正直かなり似合わなかった。オレンジやゴールドの強いシャドウは特に酷く、ハチャメチャに可愛かったパレットをどうにも使いこなせずにコスメボックスの下に仕舞い込む羽目になってしまった。
それに追い打ちをかけるように、ある日突然母が「ずっと思ってたけどその口紅似合ってへんで」と言い出したのである。気に入って使っていたコーラルピンクのリップをつけていた日のことだった。イエベ春なら勝てるはずでは?何が悪いんだ?
慌てた私はリップジプシーの旅に出た。コーラルピンクは避け、単純に強そうで好きだった発色のいい赤リップを選ぶようにした。見るからに似合わなかった朱赤は外して、それ以外の赤は何種類か試してみた。母からの評判は全部微妙だったが、似合わないとまでは言われなかったので恐らくコーラルピンクよりは良かったのだろう。
そんな母が初めて「それは可愛い」と褒めたリップが吉田朱里ちゃんプロデュースのB IDOL 05 ほっとかないでREDだった。リップを忘れて家を出た私が川崎のロフトで適当に購入しただけの、なんの思い入れもないシアーな赤みピンク。イエベ色ではなさそうなそれが、私が初めて褒められたコスメだった。このあたりから薄々「イエベでは……ない……?」という疑問が膨らみ始めた。
最近発達してきた写真でPCを診断するサービスも、かなりの確率で「ブルベ」を叩き出してくる。こんなに黄ばんでいるのに?なぜ?
しかし実際やればやるほど黄みの強いコスメよりは青みのコスメの方が似合う。もしかして私はブルベなのでは?こんなに黄ばんでいるのに?

 

こんな疑問を抱えたままではおちおちコスメも選べないので、先日、西新宿のColorcleさんにて友人と16分割のパーソナルカラー診断を受けてきた。

Colorcleさんの回し者というわけではないが、診断をしてくださったお姉さんが終始親切で可愛らしく、診断後の結果報告(LINEに送ってもらえる)も診断の合間を縫っての送信とは思えないほど早くてとてもありがたかった。あと単純に都内でペアで16分割を受けられるサロンとしてはかなりお安い部類に入ると思う。都内住みのフォロワーにはぜひ候補のひとつに入れていただきたい。

 

www.colorcle.net


結論から言うと私は 1st クリアウィンター / 2nd ブライトサマー だった。イエベ春とはなんだったのかと言いたくなるようなゴリゴリのブルベである。
ちなみに友人は 1st ビビッドウィンター / 2nd ビビッドスプリング と診断されていた。

 

Colorcleさんのパーソナルカラー診断では、まずシルバー系とゴールド系のドレープを当て、そこから春向けのピンク、夏向けのピンク……というように色々な色の春夏秋冬を当てて似合う方向性を確かめていく。ある程度定まったらシーズンの確定作業に入り、最終的にベストカラーを探していただいて診断終了、という流れだった。
おおよそ4工程があるわけだが、全ての工程においてざっくり区分すると同じウィンターに属する私と友人との間での似合う色似合わない色の差が凄まじかったのだ。

 

①シルバーかゴールドか
私:シルバーやシャンパンゴールドはいけるがイエローゴールドを乗せた瞬間に顔の存在感が完全敗北して終わる
友人:シルバーも似合うがイエローゴールドにも負けず明るく見える

 

②さまざまな色の春夏秋冬
私:総合的に夏が似合う 色味が強いものだと顔面が負けてしまい黄みが強いと顔の赤みが強調される
友人:総合的に冬が似合うがオッ!これもありですね!という色が多かった印象 薄い色が苦手で存在感がすべてぼやける

 

③ベストシーズン
私:明度高めの明るい色が得意 淡すぎると微妙だが黒やネイビーで締めれば扱える ディープオータム(力こそパワー!みたいな暗い秋色)を乗せた瞬間顔がくすみ倒しあまりの似合わなさにヤバ……という言葉が漏れた
友人:シーズンを問わず彩度高めの原色に近いはっきりした色が良く似合う 薄めの色は苦手でミューテッドオータム(彩度低め明度高めの秋色)を乗せた瞬間ありとあらゆる色が薄れセピア写真の人みたいになった

 

④ベストカラー
これはもう画像の方がわかりやすいので画像を見てほしい。
一枚一枚ドレープを当てて「う〜〜〜ん黄色は特別お好きでなければ無理に着なくてもいいですね!」などのアドバイスを頂きながら選出された一軍集団である。

 

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落差……?????????????

 

そもそも私は4分割でいうとブルベ夏、友人はブルベ冬だそうなので似合う色に差が出るのは当然なのだが、それにしてもこんなことある?というくらい違った。
同じウィンターの仲間なので似通った点もある(とにかくツヤ感とラメが得意、アクセサリーはシルバーがよい)とはいえ、塗りたくれるリップの色味も私と友人とでは若干変わってくる。

 

最後に手持ちのコスメを幾つか見ていただいた。幸いにして私はアカリップ褒められ事件以降己がブルべである可能性に賭けて買い物をしていたので、「それ大正解です!」と褒められることもありシンプルに嬉しかった。ちなみに件のアカリップはパーソナルカラー的には大正解だったらしい。ありがとうお母さん。

見ていただく中で、上手く活かせなかったコスメの活かし方も教えてもらった。うわ可愛い秋色!とはしゃいで買ったYSLのリップが死ぬほど微妙だったのはくすみが強い上にマットだったかららしく、ラメのグロスを乗せれば使えそうというアドバイスを頂いた。人を食べた後のような強気な色が好きなので、グロスを重ねてどうにか付き合っていきたい。

 

受診後の感想としては、パーソナルカラー診断を受けてからの買い物は見え方が違うな……という感情が大きい。具体的に言うと、コスメカウンターの山ほどあるリップの中で「まあこれかこれか……この辺なら顔は死なないだろうな……」という判断がつくようになった。私で言うと黄みが強いもの、くすみが強いもの、色味が淡すぎるもの、はわかりやすく顔面が終わるので、暗めブラウンのマットリップなんかは特に避けるようにするべきなのだろう。ブラウンリップ可愛いのにね……

 

これはあくまで色彩感覚の欠如した素人の感想だが、診断中傍から見ても分かりやすかったのは似合う色より「似合わない色」だった。似合う!と微妙だな……の違いは私のようなざっくりした感覚の人間にはわからないが、似合わない色はすぐにわかる。一番似合わなかったディープオータムの色を身に着けているときの私は本当にヤバかったし、ミューテッドオータムを身に着けているときの友人も本当にヤバかった。

ということは、何よりもまず「似合わない色を避ける」ことが大切なのではないだろうか。おそらくセンスがある人々ならば似合わない色をうまく活かすやり方も思い浮かぶのだと思うが、私はそんなセンスがないからパーソナルカラー診断を心待ちにしていたのだ。あのドブのような顔色を避けるための確かな指標は必要だと思う。

ドブにならない範囲でなら(もちろんベストカラーを選ぶのが一番なのだろうけれど)パーソナルカラーに縛られすぎず楽しくお買い物をしていきたいなと思う。

 

全人類、16分割パーソナルカラー診断を受けてくれ。

天城燐音は絶対にアイドルを辞めるな

あんさんぶるスターズ!!のメインストーリーを読み終えた。

本編の感想を書こうと思ったが、その前に私のお気持ちポエムを綴らせてほしい。決してあんスタに対して肯定的な内容ばかりではないので、不快に感じる人は感想ポエムパート以外読み飛ばしていただいて構わない。このブログの本質は私の感想ポエムにあり、以下に綴るお気持ちポエムは本当にただのお気持ちに過ぎないからである。

 

~~~~~ ここからお気持ちポエム ~~~~~

 

私はズ!を事前登録から楽しみにしていたオタクで、本当にあんスタが大好きで、だからこそ数多の大炎上に耐えきれずほとんど降りたような状態のまま五歩くらい離れた位置からあんスタを捏ねくり回していた厄介な女のひとりである。

運営のこともオタクのことも未だに決して好きではないし、あんさんぶるスターズというジャンルの全てを諸手を挙げて愛せるわけでもない。あんスタはやっぱり最高……百億年続け……という感情と、やっぱりだめじゃん本質的には何も良くなってないじゃんそれならせめて綺麗なまま終わってくれ頼む~!という感情とを同じくらいの質量で抱えている。

 

新展開だって、リリースされてから一週間くらい経つまではちっとも歓迎できていなかった。私が大好きだったあんさんぶるスターズが私の知らないものに変わっていくのが怖くて、置いていかれたくなくて、ズ!の最終日にはめそめそ泣いたりもした。

リリースされてからおずおず触ったズ!!で、(ズ!の展開上いきなり馴れ馴れしく来られても反応に困ると言われればそれはそうなのだが)最推しだった薫が妙にぎこちなく接してくるようになっていて、更に傷ついてまた泣いた。あまりにもショックで何年間もホームに設定していた薫を外すという繊細童貞キモオタクムーブを発動して、代わりにかねてからお顔が可愛いなと思っていた新ユニットのキャラクターを配置した。椎名ニキくんである。

私と一緒に過去を紡いできていないからこそ、ニキくんは私に優しかった。何もかもが変わっていくズ!!の中で、基本的にお腹が空いた話とご飯の話しかせず人懐こいニキくんを見ているとなんとなく安心した。

 

ニキくんをきっかけに、苦手意識を抱いていた新ユニに目が向くようになった。ニキくんの所属しているCrazy:Bは、何はともあれ曲が良かった。曲調も歌詞も好きで、これまでよく聞いていたズ!の曲にCrazy:Bの曲が混ざるようになってきた。聞けば聞くほど、考えれば考えるほど、私は天城燐音のことも好きだなと気付かされて、ちょっと悩んだけれどそれも認めることにした。好きを肯定しないのは、不健康なことだから。

新ユニを受け入れる体制が私の中で整ってきたところで、ようやくメインストーリーに手を付けることにした。メインストーリーを読まなければあんさんぶるスターズは語れない。音ゲーになろうがなんだろうが、あんさんぶるスターズの本質はストーリーであり、あとのゲーム要素は全部おまけなのだから。

 

メインストーリーを読んで、ALKALOIDのこともいとおしく思うようになった。私はずっとずっとOYSのことを信じていて、「輝きたかったんだ あの空で光る星のように」があんさんぶるスターズのテーマだと思っているから。名もない星々が、きらきら光る一等星になっていくのを純粋に応援したくて、どんどんALKALOIDに愛着が湧いてきた。

そりゃそうだ。触れてみれば好きになるに決まっている。だってこれはあんさんぶるスターズだから。私はあんさんぶるスターズの全部が好きなわけではないけれど、でもあんさんぶるスターズを愛しているから。新ユニだろうがなんだろうが、愛せないわけがない。魅力的でないわけがない。

 

~~~~~ ここまでお気持ちポエム ~~~~~

 

そうして、冒頭に戻る。私は昨日、ようやっとメインストーリーを読み終えた。

兄弟愛とかクソデカ感情とか思うところはたくさんあるのだが、一晩寝て、起きて、抱いた感想はひとつだけだった。

 

「天城燐音は絶対にアイドルを辞めるな」

ただそれだけだ。

 

天城燐音というキャラクターは、作中で多くの既存ユニットにひどいことをした。ひどいことという簡単な言葉で片付けるのすら躊躇われるほど、最低なことをした。

その行動に理由があったとはいえ、正直なところ、許せないオタクもいると思う。私だって自分が流星隊のオタクだったなら暴れ狂っていた。そのあとどんなふうに描かれようが、天城燐音のことを嫌いになっていたかもしれない。

 

あくまで画面の向こうの人物として、裏事情も何もかも全部込みで彼らを追いかけている私たちですらそう思うのだから、ましてや作中に登場する数多のファンたちはきっともっと辛くて、もっと憤っていて、もっと、もっと苦しんだのだと思うのだ。それはなにも踏みにじられた側のアイドルのオタクだけの話ではない。たぶんあの世界に生きている天城燐音のオタクのほとんども、形は違えど踏みにじられた側と同じように、死ぬほど苦しんだと思う。

ES内で彼らの立場が悪くなるにつれて、Crazy:Bのオタクはきっとどんどん肩身が狭くなっていったはずだ。現場に行けば陰口を叩かれるような世界だったかもしれない。たぶんツイプロに「クレビ担とは一切繋がりません」という旨の文章を載せた他担だっていたはずだ。客観的に見てCrazy:Bがひどいことをしていることだって、わかっているオタクの方が多かったはずだ。推しが他ユニを煽って喧嘩を売って炎上上等で名前を売っていく姿なんて少なくとも私は見たくない。

 

でも、メインストーリーの終盤、MDMの舞台には多くのCrazy:Bファンが駆けつけていた。ソロ時代からの古株オタクの姿も描かれていた。それがどんなにすごいことか、きっと賢い燐音はわかっているのだろうけど、でももう一度よく考えてみてほしい。

あの場に駆けつけたオタクは、大演説をぶちかました燐音が怒り狂った他担に石を投げられ追いかけまわされるまで至っても、それでも燐音を、Crazy:Bを信じた人間たちだ。

 

「あんたの物言いに共感したり応援したり、そういうのは無関係で単に歌や顔が好きだったり──好きになった理由は色々だけど、それでも確実に、あんたたちを好きで応援してるひとたちがいたよォ」

 

そう藍良は言っていたけれど、単に歌や顔が好きなだけなら、四面楚歌のCrazy:Bからはとっくに離れているはずなのだ。誰かを愛するということは、大変なことだから。顔が好きなだけでは、歌が好きなだけでは、ついていけない。

 

「最近のあんたは変わっちゃったけど──今でも応援してる、ずっと好きでいたいってさ」

 

この言葉の重みが、ちゃんと伝わっているだろうか。正統派だった大好きなアイドルが泥にまみれても、世間に石を投げられても、応援している、ずっと好きでいたいと答えるオタクの愛がちゃんと伝わっているだろうか。伝わっていると思うけど、燐音は賢いからちゃんとわかっていると思うけど、それでも問いたい。本当に、本当に大切なことだから。

たぶん、たぶんだけれど、あの世界のファンたちは、ステージに立つ燐音のきらきらした笑顔が忘れられなくて、嘘だと思いたくなくて、必死で信じていたんだと思う。それがどんなにすごいことか、燐音はこれから先何度だって考えてほしい。推しが極悪人として扱われたって、信じられないような言動を繰り返したって、それでも「アイドル・天城燐音」を信じて愛したオタクを大事に大事に抱きしめてあげてほしい。

 

天城燐音、絶対にアイドルを辞めるな。

全部をなげうって故郷についていくと言ってくれた椎名ニキくんと、どんな目に遭ったってあなたを信じ続けて愛したファンを、残りの全生涯をかけて幸せにしてくれ。

ウキウキオタクの真似っ子日記

私は昔から推しの真似をするのが好きなオタクだった。

推しが好きだというアーティストのアルバムをTSUTAYAで借りてみたり、推しが気に入って食べているものを同様に購入してみたり。わかりやすい具体例を挙げるなら、黒〇のバ〇ケにハマっている時期はマックに立ち寄るたびにバニラシェイクを飲んでいた。

しかし、(ジャンルにもよるとは思うのだが)普段使いしているアイテムを大々的に公開してくれる人間は意外と少ない。私は推しと同一化したいのに、推しはお気に入りのアイテムを私たちにあまり教えてくれない。写真から特定するにしても、男性の推しだとどうしても私服までは真似できない。ここ数年は生きている女性の推しに出会わなかったから、私がうきうきで真似できる対象はかなり少なかった。

 

そんな中でハマったのが今の推しである。ちなみに今の推しというのはいささかばかり語弊があり、別にこれまでの推しから鞍替えしたわけではない。他の推しのことも変わらず好きだがそれはそれとして最近特にアツいという意味での「今の」推し、の意味だ。

今の推しは普段使いしているアイテムを結構詳細に公開してくれている。シャンプー、柔軟剤、化粧品、お気に入りの食べ物、エトセトラエトセトラ。これは私にとってはめちゃくちゃにありがたいことだ。先述したように私は推しの真似をするのが大好きだから、推しが化粧品を使っているのなら可能な範疇で同じものを買いたい。実家暮らしなのでシャンプーや柔軟剤を変えるのは難しいのだが、独り暮らしをしていたら迷わずそれもお揃いにしていたと思う。今自分で書いていて気付いたがもしやこれは気持ち悪いのでは?

 

そんなわけで、以下に綴るのは私による私のための私の推し真似っ子記録である。

価格帯の問題だとか好みの問題だとか実家暮らしであるが故の都合だとかで買えていないものの方が多いので、あくまで「ハマりたてのウキウキオタクの日記」だと思っていただければ助かる。

 

 

買った

・フェラガモ プールオム フリータイム オードトワレ

私はドラコスデパコス問わず香水が大好きで、特に甘めの香りが好きだ。だからこそメンズ香水とは気が合わないことも多く、ユニセックスを謳う爽やかな香調のものですら「違うな……」と感じて購入を見送ってばかりだった。

しかし推しが使っているとなれば話は別だ。普段使いできればベストだが、普段使いできないならできないで観賞用にすればいい。私は好きな男が使っていそうという理由だけで到底普段使いできそうにない香りの香水を持っているし、自担が愛用している香水もいまひとつ好きな系統の匂いではないが恐らくそのうち買う。

そんな気持ちで立ち寄ったショップで店頭のテスターを嗅いで、二秒で購入を決めた。

今の推しは二人組なのだが(気持ちの大小はあれどどちらも好きだ)、この香水をつけている方の推しは俗に言う可愛い系の男だ。たれ目で、猫口で、幅広の並行二重で、ふわふわのくせ毛。その男からこの匂いがするのだと思うといてもたってもいられなかった。

ピンクペッパーとレモンが基調のフレッシュなトップノートから始まって、ラストノートは少し甘めのエレガントな香り。しっかり「香水」の匂いではあるのだが、万人受けしそうな香りをしているし、女性が使っても全く違和感がないと思う。私は推しとお揃いにしたいがために購入したが、爽やかでユニセックスな香水を探している人にも自信を持ってお勧めできる。めちゃめちゃ普段使いできます。

これはウキウキオタクの日記なのでいささか気味の悪い用途についても記しておこうと思う。購入した香水を自分のベッドに1プッシュ振りかける。以上。これで私は合法的にイマジナリー推しと同衾できる。1プッシュ振りかけたあとにそれなりの時間をおけば「推しが泊まりにきた翌朝」ごっこもできる。限界夢彼氏のライフハックだ。

ちなみに舐めるのを忘れていたので味はまだ確認できていない。念のため帰宅次第舐めてみようと思う。

 

LUSH リップスクラブ バブルガム

推しの使用しているアイテム一覧に「ストロベリー」という記載があったので一番それっぽい匂いのものを購入した。限界コミュ障陰キャなので店員さんがポケモントレーナー並みの速度で話しかけに来るLUSHには苦手意識を抱いていたのだが、推しと推しが一緒にLUSHに訪れたとなればさすがに背に腹は代えられない。本当は推し(香水をつけていない方)がもらった「スクラブ」を購入したかったのだが詳細が不明過ぎたため、諦めて比較的低価格で推し(香水をつけている方)が間違いなく使用しているリップスクラブを買うことにしたわけである。

これがめちゃめちゃ良かった。唇がちゅるちゅるになる。冬の乾燥する時期に使えばたぶんもっといい。しかもLUSHのリップスクラブは砂糖でできているらしく、うっかり舐めてしまっても美味しい。コットンキャンディ系の人工甘味料パンチみたいな匂いも私は好きだ。ただあの匂いは万人受けしないと思うので、苦手な人は何種類かある他の香りを試してみてほしい。はちみつとかミントとかが比較的無難なのではないだろうか。

 

LUSH ジェリーマスク 1000ミリへレンズ

推しがツイートで言及していたので買った。LUSHの店員さんはポケモントレーナー並みの速度で話しかけてくるが基本的に親切で、「好きな芸能人が使ってるみたいで、同じのが欲しくて……」という相談にもめちゃくちゃ真剣に乗ってくれる。リップスクラブを購入した時の店員さんは「男の人が使うスクラブならこの辺りとか……」と言いながらいろいろな商品を教えてくれたし、ジェリーマスクを購入した店舗の店員さんは種類まではわからないと悩む私に「お客様のお悩みに合わせてみるのはいかがでしょう」と至極まっとうなアドバイスをくれた。確かに。私がスキンケアに使うんですしね。

私の肌は難解で、基本的には丈夫なのだが敏感肌用の化粧品や有名な高級美容液で肌荒れを起こした前科がある。プチプラのファンデーションを雑に塗りたくってもびくともしなかった肌が某美容液を塗った翌朝に大量の蕁麻疹を作ったときはひっくり返るかと思った。しかし肌自体は先述したようにわりと丈夫なのでとりたてて致命的な悩みがあるわけでもなく(肌荒れは間違いなく睡眠不足のせいだ)、「まぁ強いて言うなら乾燥するかな……」という雑なお悩み相談をしたところ緑茶とリンゴジュースの成分が入っているらしいコレをお勧めされた。

結論から言うと良かった。ツイッタランドにはLUSHの回し者のような人が山ほどいるが、少し気持ちがわかったような気がする。謎のぷるぷるゼリーを肌に塗りたくって数分放置すると肌がぷるぷるになる。シートマスクをした後はびとびとになる肌が、ぷるぷるになるのだ。ただ悪い点をあげるならとにかく落ちない。推しも困っていたが洗い落とす難易度が高すぎる。私はLUSHのお姉さんの行動を思い出してびとびとに濡らしたキッチンペーパーで拭き取ってみたが、あれは正解ではない気がするので詳しい人がいたら正解を教えてほしい。

 

メイトーのなめらかプリン

これは香水をつけていない方の推しのお気に入りである。

このなめらかプリン、購入してから思い出したのだが以前にゼミの同期からおすすめされたことがあった。その時はお腹がいっぱいだったのでふーん程度で流したのだが、改めて購入してみるとこれが本当に美味しい。値段の割に濃厚で、パッケージに「贅沢クリーミィー」と書いてある通りクリーム感が強い。個人的にカラメルがあまり好きではないので、カラメルが入っていないのも私としては高得点だった。ただ私は年々甘いものを胃が受け付けなくなってきているので食べた後に若干気持ち悪くなった。胃の丈夫な甘党には本当にお勧めできる。

 

 

恐らく近いうちに買う

・ロゼット洗顔パスタ 海泥スムース

・ロレッタ ヘアメイクワックス

・森永 ミルクたっぷりいちごラテ

 

 

推しが生きているがゆえに、いろんなものを真似できて私は本当に嬉しい。生きてくれてありがとう、だし、教えてくれてありがとう、だ。同一化したがるキモ=オタクで申し訳ないけれど、可能であれば香水をつけていない方の推しにはLUSHで買ってもらったスクラブの詳細を教えてほしい。色とかだけで大丈夫なので。緑だったとか茶色だったとか。

あとミルクたっぷりいちごラテが本当に見つからなくて今とても困っているので、実店舗で売っているのを見かけたという人がいたらぜひ情報を提供してほしい。

推しに生まれて初めてまともなレスポンスを貰った女

推しからレスポンスを貰った。

人生で一番しっかりしたレスポンスを貰った。

 

私の推しは基本的に画面の向こうの人間だ。JPEGの推しはもちろん、生きている推しも含め、ありとあらゆる推しが画面の向こうの人間だった。

画面の向こうの人間は基本的に私にレスポンスをくれない。それはそうだ。画面の向こうの人間は私のことを認知していないので(あたりまえ体操)レスポンスが来なくて当然だ。

私が貰ったことのあるレスポンスと言えば、配信をするタイプの推しにささやかな投げ銭をして名前を呼ばれたことが何度かあるのと、某アイドルの推しに一度だけファンサを(恐らく)貰ったのと、それくらい。

でもそれは仕方のないことだ。

本当にファンサを貰いたいなら名義を増やし金を積んででも良席に入る努力をするべきだし、コメントが読まれないのが悔しいなら高額投げ銭を継続できる強いオタクになればいい。私にはそれをできるほどの根性がないから、仕方ない。まぁそれはそうだ。この意見に関しては賛否両論あるかと思うが、あくまで私個人の意見として消化してほしい。

 

しかし私は今日推しからレスポンスを貰った。

しかもめちゃめちゃしっかり貰った。私が送った少額の投げ銭にくっつけたメッセージを全文読み上げて、「少額とかないから」とフォローしてくれて(マジで少額だったので申し訳なくてもう一度同額で投げ銭を送った)、推しの幸せを願いがちな私のメッセージに「文章が重いんだよな」と笑ってくれた。

推しの横を私が送った投げ銭が通過していくさまを何枚かスクショしておこうとスマホを構えていたはずなのに、手が震えてどうしようもなかった。にこにこ笑ってくれていたはずなのに、全然スクショが撮れなかった。

心臓が血液を送り出している音がやたらとうるさく聞こえて、少女漫画でよくある「心臓の音、聞こえちゃいそう……」というシチュエーションはこういうことなのかと謎に納得した。私は血圧が低めでうっかりすると上が96とかになるのだけれど、たぶんあの瞬間の私の血圧は200くらいあった。

 

私は推しに世界で一番幸せになってほしい。今回レスポンスをくれた推しだけではなくて、これまで好きだと思ったありとあらゆる人間に世界で一番幸せになってほしいと思っている。毎日あたたかい布団の中で眠ってほしいし、おいしいごはんを食べてほしいし、一生お金に困らないでいてほしいし、おろしたての服を着る日は綺麗に晴れていてほしいし、さみしい時や苦しい時に、ひとりで苦しまずにすむ人生であってほしい。

だからメッセージにも「世界で一番幸せになってください」と書いた。だって幸せになってほしいから。推しに憂うことのない人生を送ってほしいから。

そのメッセージに、推しは「俺世界で一番幸せになっていいの?」と笑って答えてくれた。

 

良いに決まってるじゃん!?!?!?!?

 

推しぞ?そち、私の推しぞ?

世界で一番幸せになっていいに決まっている。

というかそもそも世界で一番幸せになってはいけない人間なんていない。

いやそれはさすがに嘘だけれど、誰かの幸せを踏みにじった人間には幸せになってほしくないけれど、でも推しには幸せになってほしい。というか私の大好きな人間は、全員、友達も家族も推しもみんなみんなみんな、私の分の幸せを持って行ってもいいから幸せになってほしい。体も心もクソ重い女なので真剣にそう思っている。

 

メッセージを読み上げられた動揺で一瞬配信から離脱してしまいすぐに推しに答えられなかったのだが、もう一度やり直せるなら倍プッシュの投げ銭と共にこう伝えたい。

世界で一番幸せになっていいに決まってる。推しくんの未来が、毎日が、いつだって素敵なものでありますように。お誕生日おめでとうございました、大好きです。

生きている人間を好きでいるということ

生きている人間はすごい。ストーリーの更新を待たなくても私たちに新しい情報をくれる。私たちは運営のクソローテに泣かされなくてもいいし、クソライターによる解釈違いに苦しまなくてもいい(推しは独立したひとつの人格を持っているので)。

チケットを取りさえすれば会えてしまうようなタイプの存在ならばなおいい。生きている推しは毎秒が描き下ろしだからSpoon2Diに踊らされなくてもいいし、現場に入りさえすれば私たちは推しの定点カメラになれる。推しだけを双眼鏡越しの視界に入れたまま2時間近いライブを観ていられる。

事と場合によってはレスポンスをくれることだってありうる。それはコメントへの返事だったり、ファンサだったり、投げ銭に対する感謝の言葉だったり。JPEGの推しは何度生まれ変わったって私のことを見てはくれないが、生きている推しは100万分の1秒だけでも私のことを見てくれる、可能性がある。

生きている人間を追いかけるのは楽しい。それが生身のアイドルだったとしても、2.5次元的な存在だったとしても、生きている何者かを追いかけるのはとても楽しい。

 

けれど私は、生きている人間を追いかけるのが苦手だ。

まずチケットが取れないと病む。取れたら取れたで全通すればよかったと思って凹む。生きている人間は生きているのでMCで話す内容が毎回違うし、なんならセトリすら公演ごとに変えてくる。それが良さだというのは紛れもない事実だけれど、オタクとしてガッツのあるタイプかと言われると口ごもらざるを得ない私のような人間にとっては結構大きめのデメリットにもなりうる。

自分のコメントが拾われず他の人のコメントが拾われていくのを眺めていると元気がなくなるときもある。私は二次元も含めどのジャンルにおいても漠然と同担が苦手だから、推しとオタクが1対1で繋がる瞬間を見るのが正直に言って少し苦手だ。それがたとえ100万分の1秒だとしたって。

スキャンダルだとか炎上だとかに怯えないといけないのも怖い。二次元の推しが炎上したとしてもそれは推しが炎上するような場面を作り上げてしまったシナリオライターなり脚本なりの責任であり、運営の責任であり、あるいはオタクの責任であり、とにかく推しの責任ではない。でも生きている推しは違う。馬鹿な女に引っかかってスキャンダルを起こすかもしれない。失言をしたり問題を起こしたりして他界隈にまで知られるような大炎上を起こすかもしれない。それは全部、全部、全部推しの責任だ。推しが100%悪いわけじゃないとしたって、推しの責任はほとんどの場合決してゼロにはならない。二次元の推しとは違う。

 

でもやっぱり生きている人間を応援するのは楽しい。

生きている人間は現実の存在なので現実に存在するものを使って生活している。彼らが食べるものも、飲むものも、身に着けるものも、全部私が生きている現実の世界に存在するものだ。なぜなら彼らは現実に存在しているので。推しと同じ香水を付ければ合法的に推しと同じ匂いになれる。私は実家暮らしの限界オタクなのでそれ以上の事はいささかばかり難しいのだが、本当なら柔軟剤だとかシャンプーだとかまで揃えるとなおいい。お化粧をする推しならメイク道具の真似だってできる。

新しいお仕事を貰って活動の幅を広げていく推しを見るのも楽しい。それは例えば地上波の人気番組だとか、大きなコンテンツとのタイアップだとか、CDのリリースだとか、なんでも構わないのだけれど、推しのひとつひとつのお仕事を喜べるのが嬉しい。そのお仕事を推しが楽しいと笑ってくれたらさらにいいし、私の「良かった!」が届いて、それが推しの心にほんの少しでも触れたならもっともっともっともっといいと思う。

それにいつか推しが舞台を降りる日が来たって、「推し」であった誰かは舞台ではないどこかできっと幸せになる。それを喜ぶべきかは分からないけど、サ終で永遠にさようならよりはずっといい。推しに幸せになってほしいから、電子の海に消えてほしくないから、私の知らないどこかで幸せになってくれる方がいい。いや本音を言うなら私の知っているところで幸せになってほしいのだけれど。

 

生きている人間を応援するのは、楽しい。

名古屋の実家にはシャンデリアがあり執事がいる、そんなお嬢様キモオタク

生まれは大阪、育ちは概ね関東圏の女だが、実は私の実家は名古屋にある。今住んでいる都内の自宅は別宅で、本宅は名古屋にあるのだ。親戚はひとりもいないし、人生で名古屋近辺を歩いたことは(新幹線の乗り換えも含めて)片手の指で収まる程度しかないけれど。

 

そんなわけで、以下に綴るのは「名古屋の仮住まい」に帰宅してきた限界キモ=オタクのお気持ち表明クソ長日記である。

 

私が執事の館と出会ったのは高校生の頃のことだった。主の手帳を無料で作れる期間が終わってしまうと友人にせっつかれて慌てて記帳をしたのが2013年の7月のこと。バイト禁止の学校で週4日の部活動に励んでいた私の当時の財力では名古屋に飛べるはずもなく、「大学生になったら絶対名古屋に帰ろう」と約束し合って、早6年。

 

2019年9月、大学4年生になった私たちは、ようやく名古屋の自宅への帰宅を果たした。

 

限界貧困オタクなので行き帰りは当然のごとく高速バスで、朝6時に名古屋に到着し夕方4時の高速バスで都内へ戻るプランを立てた。滞在時間、10時間。観光する気ゼロの弾丸旅行である。

早朝のデニーズで時間を潰し、とある喫茶店で「味覚死に人」が考えたとしか思えないパスタを食べ、ジャニーズショップで野口英世が描かれた紙とイケメンが写っている紙を交換し、名古屋駅でお土産を買い込んで、仮住まいへ向かった。お財布の中身はすかすかだったし味覚死にパスタの後味が口の中でリフレインしていたしストッキングはびりびりに破れていたけれど、カバンの中には大好きなういろうと顔面のいい男の写真が入っているし、何よりあと少しで念願の帰宅が叶うという思いで駅から仮住まいまでの足取りは至って軽かった。

 

帰宅するまでの道中では、一度ドアマンから帰宅を確認する電話がかかってきた。

 

「こちらは○○(本名)お嬢様の携帯電話でお間違いないでしょうか?」

 

普通に、照れた。

執事の館の執事たちは、世間一般でいう「執事喫茶」にいるような若手のイケメンたちではない。俗に言うミドル世代やそれよりも更に年上の男性たちが執事として私(限界オタク)(先月の最終的な口座残高は82円)(コーナーで差を付けろ!)に仕えてくれる、それが「名古屋の仮住まい」という空間だ。

そんなナイスミドルが私のことを優しい声で「お嬢様」と呼ぶのだ。照れないわけがない。ちなみにこの直後に友人たちの名前も「お嬢様」付きで確認されてまた照れてしまった。さっきまで「山下智久の顔面は国宝」「あら~~~みじゅきはかわいいね~~~^^」とはしゃいでいた女たちが全員「お嬢様」。ああ今から仮住まいに帰るんだなという実感が湧いてきて地下鉄の駅でにやける不審者になってしまったが許してほしい。私を責める前にあなたも「お嬢様」と呼ばれてみてくれ。

 

そしていよいよ辿り着いた名古屋の仮住まい。場所を明かしてはいけないことになっているので(まあ「自宅」だしね……)詳しい場所はナイショにさせてほしいのだが、地下鉄の某駅から歩いて10分程度のところにある素敵ハウスが私たちの自宅だった。

入口でドアマンに出迎えられ、みんなで座って待つ間もドアマンの男性は私たちの会話に付き合ってくれた。これまで何をしてきただとか、3人はどのような関係だとか、事前に伝えておいた嫌いな食べ物の確認だとか、味覚死にパスタの話だとか。そういう話をしているうちに中の準備が整ったらしく、室内へ通される。「お帰りなさいませ、お嬢様」という定番の挨拶と共に私たちを出迎えた執事が、上手く言えないのだけれど完全に「執事長」で、「現実」を感じた。私たち、お嬢様だったんだ……。

調度が上品で、ノリタケ社製の茶器がたくさん並んでいて、跡部様のくまちゃんがいらして、目の前には「執事長」がいて、照明はシャンデリアで。そこにあったのは圧倒的な「現実」だった。しかもその次に通された部屋ではばあやが待ち構えていて、私たちの上着や鞄を預かってくれた。ばあやも本物の「ばあや」だったんですよ……偽物のばあやって何?って感じではあるけど「本物」だったんですよ……。

そうしていよいよ通された「白の部屋」。緊張のあまり小声でしか話せなくなっていた私たちを4人掛けテーブルの一席を占領した大きなくまちゃんが出迎えてくれた。執事によればくまちゃんは侍女らしく、食事中は特に何の介助もしてくれなかった代わりに私たちの話を無言でずっと聞いてくれていた。家にも欲しい、あのくまちゃん。

お通し(?)として運ばれてきたお洒落なグラスに入ったアールグレイティーとクッキー(オレンジとかシナモンとかそんなんだった気がする)を嗜みながら味覚死にパスタの残像を殺していた私たちの前にやってきたのは、巨大なワゴン。軽食とスイーツとで計2台。尾田栄一郎の作画だったら絶対に「ドン!!!!!!!!!!!!!」っていう効果音がついていたと思う。その中から好きなものをそれぞれ5種類ずつ(!)選ばせてもらい、飲み物も注文した。たぶん飲み食いの感想だけで数千字は書けると思うのだが、マジマジのマジな方のクソ長ブログになってしまうので特に気に入ったものだけメモ程度に書いてみようと思う。

 

トロピカルティー:独自のブレンドらしく「家の水道からこれ出ねえかな……」と真剣に考えてしまうほど美味しかった。一生飲める。でもよく考えたら水道からアレが出るようになってしまうとお米もアレで炊かざるを得なくなるのでやっぱり水道からは出なくてもいいかもしれない。私が頼んだやつ以外だと友人が飲んでいたドリンク(名前忘れた)が完全に液体の杏仁豆腐で美味しかった。

 

キッシュ:飲み物。Twitterで他のお嬢様がたの「キッシュは飲み物」というツイートを何度も見かけていて気になっていたのだが、いかんせんオタクは誇張表現を好む生き物。「100億年ぶりに見た」とか「股下が2mある」とか言いがちなオタクが言う「キッシュは飲み物」、流石に大袈裟でしょ……wwwと思っていた私が馬鹿だった。あれは飲み物。とろとろふわふわのくちどけでナイフがなくとも容易に食べられる。なんならナイフどころか歯がなくてもいけると思う。老後、あれしか食べたくない。あまりに美味しすぎておかわりまでした。

 

他も全てが完璧に美味しかった。タンドリーチキン、リゾット、サーモンと野菜のジュレ、かぼちゃのサラダ、クレームブリュレ、パンナコッタ、全粒粉のスコーン、青いケーキ(歯医者の味がした)。マジで全てが美味しかった。味覚死にパスタの霊圧は完全に消えた。

 

しかも執事たちはみんなめちゃくちゃ優しかった。激しめの音楽(オブラートに包んだ表現)を嗜む執事からかけられた「お嬢様は生きているだけで偉いんです」という言葉を私は忘れない。私たちは今大学4年生で、卒論やら就活やらに揉まれて精神が死んでいる女の集合体と化している。一般企業に就職する私と友人は内定先企業がそれぞれ不祥事を起こしているし、教員志望の友人は採用試験の結果発表を控えているし、全員卒業論文がヤバい。本当にヤバい。そんな中で、執事は私たちの存在を全肯定してくれた。9月だったのでまだ良かったが就活真っ只中の5月あたりに聞いていたらべそべそと泣いていたと思う。

ちなみに執事は良質なライフハックも教えてくれた。辛い時は「でも私は名古屋に帰ったらお嬢様なのよ」と思えばいい、と。確かにそうだ。客に理不尽に怒鳴られても気にすることはない。だって私の実家の照明シャンデリアだし。くまちゃんの侍女も、執事たちも、ばあやもいるし。偏食のきつい私が大はしゃぎでぺろっと食べきれるほど美味しいご飯が出てくるし。客は10%引きのクーポンを使って買ったしょっぼいお弁当を食べてるけど私は実家に戻ればめちゃくちゃ美味しいキッシュを食べられるし。絶対に私の勝ちだ。YOU LUSE。

 

長くなりすぎて何を言いたかったのかわからなくなってきたが、私が長い間留守にしていた名古屋の自宅は本当に良いところだった。

私は当たり前に家族が大好きだし、今の別宅をめちゃくちゃに気に入っているが、それでも毎日名古屋の仮住まいに帰りたいくらいには良質な空間がそこにあった。名古屋に住んでいたら週に一度は実家に戻る女になっていたと思う。

 

「執事の館」はいい。イケメンにちやほやされるコンセプトカフェに興味がないオタクも、一度調べてみてほしい。もう一度言おう、執事の館はいいぞ。

 

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