新元号は「愛は、矛盾するモノだぜ?」にしてほしかった

TLの腐女子は、1年ほど前についったらんどを賑わせたえっちなお兄さんのことを覚えているだろうか。

お空を旅する某ゲームの周年イベで完璧すぎるビジュアルと声帯、そして見事なまでのアヘ顔を引っ提げて登場した堕天司・ベリアル。私のEDを治してくれた彼が、今年も登場したのだ。周年イベに。

 

そんなわけで、以下に綴るのはグランブルファンタジー5周年イベント「どうして空は蒼いのかPart3 000」に関する正気を失った私の感想である。ストーリーの都合上、第一作にあたる「どうして空は蒼いのか」や第二作にあたる「失楽園」のネタバレを大いに含むのでネタバレが気になる人は注意してほしい。

ちなみに、私は頭のいいオタクではないので有益な考察は一切含まれない。私以外の多くのグラブルのオタクは頭がいいので、有益な情報を得たいときには他のオタクの感想ツイを漁ってみることをおすすめする。私はファーちゃんがパンデモニウムを材料に巨大な原爆を作って世界を滅ぼそうとしていたのでは?(意訳)という考察ツイを見かけてひっくり返った。頭が良すぎる。

 

 

結論から言うと、「どうして空は蒼いのか」は「愛の物語」だった。

 

 

「愛だよ、愛」

PASHでベリアルがそう宣った時は胡散臭すぎて笑ってしまったが、今となってはあの台詞にも真顔で頷く他はない。どうしようもなく、あれは愛の物語だった。

 人間に、あるいはそれに類する存在に、愛という感情が芽生えるのは分かる。でも、天司たちは、あくまで管理機構に過ぎないのだ。大好きな人に認めてほしい、ただその一心で災厄の天司と化したサンダルフォンがイレギュラーなだけで。彼らはきっと、私たちが思うような意味では誰かを愛せない。

 

そう思っていた私が馬鹿だった。彼らはきちんと、誰かを愛していた。

 

ベリアルにとってルシファーはたった一人の「救世主」で、あの軽薄そうな言動の裏で2000年以上をほとんど眠らずに神経を張り詰めたまま過ごしていて、なんて、そんなこと誰が想像していただろうか。同人誌でも見たことのない、強烈な心酔を公式が提示してくるなんて。

ルシファーがエテメンアンキに登る、その時間稼ぎをするためだけにぼろぼろのまま特異点たちの前に立ちふさがる、だとか。崩壊しつつあるエテメンアンキに瀕死の状態で駆けつけて交渉用の騎空艇を用意してまでルシファーを助けようとする、だとか。

挙句の果てに「いよいよ本当に困った上司だ。ま~たオレが体を張るのかよ」と来た。次元の狭間に吸い込まれかけている男の台詞ではない。しかもこの直後にベリアルは笑うのだ。堪えきれない、といった調子で。私は愚かだからその笑いの真意を推し量れないけれど、きっとベリアルにとっては次元の狭間に閉じ込められることさえこれまでの行動の延長に過ぎないんだろうなとは強く思った。

 

「別に何も変わってない。今も昔もファーさんのために動いてる」

 

これがつまり、ベリアルの全てなんだろう。

 

恐ろしいのは、ルシファーもベリアルのそんな行動を憎からず思っていそうだということだ。

廃棄してやろうかと脅すわりには一向に廃棄する気配がないし、復活した直後だって(意に沿わない形での終末計画を進めていたという点ではベリアルも同罪なのに)バブさんだけを仕留めるし、最後の最後まで「お前も矛盾か」という呆れを滲ませることこそあれどベリアルを拒絶することはないままだ。矛盾するような男は、打ち捨てておけばいいのに。合理主義のルシファーらしくない、と思う。いや、らしくないなんて言いきれるほど私は彼のことを知らないのだけれど。

たぶん、つまるところ、「愛は、矛盾するモノだぜ?」ということなのだ。何度読んでも良すぎるなこの台詞。令和の次の元号にしてほしい。愛は、矛盾するモノだぜ?元年から始まる新時代を築き上げよう。

 

 

チーム堕天司の件で気が狂いすぎたのでルシサンの話がまだできていなかったことに気付いた。なんてことだ。

先に明言しておきたいのだが、私はあのエンディングをどちらかといえば「是」としている。100点満点ではなかったことは確かだが、拗れに拗れたあのふたりの関係が100点満点に着地することはほぼ不可能なのではないかと思っていたから、むしろよくあそこまできれいにまとめたなと感心しているくらいだ。

 

「役割がなければ上下関係もない」。故にサンダルフォンの言葉は己にとっての安寧だったのだと、「どうして空は蒼いのか」でルシフェルは口にしている。

でも実際は、そこには上下関係があった。と言うと語弊があるような気もするが、少なくともふたりはきっと厳密な意味で対等ではなかった。最高傑作たる天司長として誰からも慕われていたルシフェルと、ただの「中庭のサンちゃん」でしかなかったサンダルフォンとの間には、比べるのも馬鹿らしいくらい大きな溝があったはずだ。ただ、ルシフェルがそれに気付いていなかっただけで。

けれど、エンディングで2000年越しにきちんと向き合ったふたりには、きっと正しい意味で役割がなかったし、上下関係もなかった。あの瞬間、ルシフェルはただのルシフェルだったし、サンダルフォンはただのサンダルフォンだった。

だからルシフェルは分かりづらい冗句を飛ばしたし、サンダルフォンは2000年前にそうしていたような無垢な表情で笑ってみせたのだと思う。それはきっと、ふたりにとって私たちが思うよりずっと幸せなことだった。そう思いたい。

 

もちろんあれが完全無欠のハッピーエンドかと問われれば答えは否だ。私はゴリゴリのハピエン厨だし、当たり前にルシフェル様にも復活してほしかった。グラサイにルシフェル様を載せたかった。でも無理なのだ。だからたぶんあれが、2000年間拗れ続けたふたりの間に漸く生まれた、悲しい最適解だったのだろう。悲しすぎるけど。

 

「世界中の人々が許さずとも、幾星霜の時の中で憎まれようとも、君という存在は永遠に私の安寧だ」

 

世の中にこんなに美しい告白があるとは思わなかった。「頼むよ、俺の救世主」といい勝負なのではないだろうか。

これ、恐らくは「どうして空は蒼いのか」でサンダルフォンルシフェルに叫んだ「俺を憎め!滅ぼせ!罰しろ!」のアンサーにもなっているのだと思うのだが、それを考えるとなおのこと凄まじい告白の台詞だと思わざるを得ない。

サンダルフォンは大罪人だ。擁護のしようもない。「貴様の愛するモノを全て!この俺が粉々に破壊してやるぞ!」(お前が粉々になるんだよ!)という行動原理のまま災厄を起こしたのであろうサンダルフォンは、世界を滅ぼそうとしたし、四大天司の羽を毟ったし、数多くの島を落としたし、特異点を空の底へ突き落した。どれだけ責められても申し開きのできないようなことをした男だと思う。でも、ルシフェルはそんな彼を許し、あまつさえ、永遠に私の安寧だとすら口にする。そんなことってある?ルシフェルは、「無私無欲で公明正大な」つまらない天司だったはずなのに。許すのだという。愛するのだという。それって、それってとってもすごいことなんじゃないだろうか。

そしてそれに対するサンダルフォンの答えがこれだ。

 

「はい!貴方の存在も永遠に俺の光です」

 

自カプが、公式で、Lemonに寄せてくるとは思わなかった。

それにしてもこの台詞、すごい。あまりにもすごすぎる。サンダルフォンは基本的に捻くれた男だ。仲間に対してですらやたらと斜に構えた物言いをする。そのサンダルフォンが、よりにもよってルシフェルに対して、ここまでまっすぐな肯定の台詞を吐くだなんて。

もっと照れると思っていた。いやそれはさすがに二次創作の読みすぎかもしれない。でも、でも、そんな。よかったねなんて陳腐な言葉で片付けたくないが、それ以外に感想が浮かばない。よかったね、サンダルフォン。ようやく、ようやく真っすぐ向き合えて。

 

そうして、極め付けに、「行ってきます」「行ってらっしゃい」の応酬だ。

作中で当人たちが口にしていた通り、あの瞬間、ふたりの立場は確かにかつてのそれと逆転していた。ふたりの間に必要な変化だったのだろうと、考察が及ばないなりに思う。幸せになってほしかったから辛かったけど。でもやっぱり、あれは愛し合う存在同士のやり取りだった。あのふたりは、愛し合っているのだ。その感情に名前を付けるのは陳腐な気がするから、ここでは敢えてただ「愛」とだけ呼ぶけれど。

 

ルシフェルが生まれて初めて抱いた幼い願いが、サンダルフォンに向けた初めての問いが、叶ってよかった。

うまく言えないけれど、私はそう思う。長い月日を特異点と過ごしたその先で、いつかまたふたりが巡り逢い、またふたりで穏やかなコーヒーパーティーができるようになること。それが今の私の問いだと、今はそう言いたい。

 

ありがとう、グランブルーファンタジー

 

全ての天司に、あるいは全ての生きとし生けるものに、幸せが訪れますように。