11年間かけて2人しか見つけられなかった同カプ者を一気に3人も見つけた女の話

あまりにも誰にも伝わらないので公言はほとんどしてこなかったが、11年間ずっと大好きなカップリングがある。

 

今でこそどうしようもないクソ雑魚腐女子だが、私は元々夢畑で育った人間である。
ちなみに初恋の人はフ〇ッド・ウィー〇リーだった。シリーズ第一巻を初めて読んだころから好きだと騒いでいる記憶があるので、おそらく幼稚園児の頃から私は夢女だったのだと思う。

 

さて、そんな私が10歳になったころ、某ライトノベルシリーズの広告が愛読していた子供向けの新聞に載ったことがあった。
第1章が児童向けの文庫から装丁を一新して発売されるというその作品の、3巻の表紙を飾っていた男。
その男(以下Tとする)に目を奪われた私は即座に近所の書店に走り、1巻から3巻までを購入した。速読だけが取り柄の女なので、読み終えるまでには確か1日もかからなかったと思う。

 

「え、Tって世界で一番かっこよくない?」

 

読み終わった私が抱いた感想はそれだけだった。
ガチ恋の始まりである。

 

ところでこの作品、実は1巻が刊行されたのが1989年というなかなかのご長寿ジャンルだった。
私がハマった時点ですでに1巻が初めて世に出てから18年の月日が流れている。当然ながら、関連作品の数はかなり多かった。
しかし私はTのガチ恋夢女。古い作品だから、お金がないからといって諦めるわけにはいかない。
お小遣いをはたいて軽く20冊はあった既刊を全巻揃え、私が生まれるよりも前にコミカライズが出ていたと耳にすれば親に頼み込んで近隣の古書店をしらみつぶしに探し、Tが登場するシリーズのおよそ100年前を描く同作者の別シリーズはどこの書店でも見つからなかったので取り寄せて購入した。本当はOVAも欲しかったのだが、媒体がDVDではなくVHSだったために我が家には再生環境がなく諦めた。
(ちなみにOVA版のTの声は古川登志夫氏が演じている。当時はさほど驚かなかったが、今思うと時代を感じる)

 

本編を毎日数冊ずつ持ち歩き読み返すという友達がいなかったことがよくわかる生活を送っていた私は、それだけでは飽き足らずに生まれて初めて二次創作の世界に飛び込んだ。
まだ個人サイトが活発だった時代とはいえ、いかんせんジャンル自体がマイナー気味なせいで二次創作サイトの数はそう多くなかった。
ジャンルの覇権カプがド地雷だったのでそれなりに辛かった覚えもあるが、いかんせん供給が多くなかったからわがままは言っていられなかった。
とにかくありとあらゆる作品を読んだ。当時そのジャンルで活動していたサイトはほとんどすべて網羅していたと思う。

 

そんなある日、私が出会ったのが冒頭で触れた「11年間ずっと大好きなカップリング」である。
実は前述した別シリーズに、Tとその幼馴染、それぞれの曽祖父が登場しているのだが、数少ない二次創作サイトの中でひとつだけ、この二人の組み合わせを扱っているサイトがあった。
まだBLという概念すら知らなかった私は、ふたりが男同士ということも忘れてそのカプ小説を読み始めた。
なにせ久しぶりに目にした覇権カプ以外の作品だったものだから、地雷原の中を毎日走り続けていた私にとっては砂漠の中のオアシスにも等しい存在に思えてしまったのだ。

 

さて、簡潔に言うとこのカップリングが素晴らしく「良かった」
そもそも付き合っていないほうがおかしいレベルで運命に祝福されているこの組み合わせが良くないわけがないのだが、BLのびの字にすら触れたことのない私にすら分かるほどにこのカップリングはバクモエだった。

 

いうなれば救済と信仰。
私がいまだに愛してやまない愛の形のひとつを、この二人は見事に体現していた。

 

地雷原における完璧なオアシスを見つけた私は、それこそ毎日のようにこのサイトに通い、5作品しかなかった短編を何度も何度も読み返した。
今でもあのサイトには感謝している。あのサイトがなければもう少し早めに私はあのジャンルから降りていたと思う。

 

しかし時は移ろうもので、中学生になるころには私はジャンルを移動していた。
そうして成人するまでジャンルを転々とした私は、ああも愛していたあの作品関連の話をほとんどといっていいほどすることはなかった。
周りにあの作品をわかる人間がいなかったせいで話すに話せなかったし、反オタク派である両親に促されてあれだけ必死で集めた本をほとんど手放してしまったせいで布教のしようもなかった。

 

とはいえ、私は依然としてあのオアシスカップリングが大好きだった。
語らう相手もいなければ需要も供給もなかったので滅多に話題にはしなかったが、時折TwitterやらPixivやらで検索をかけては何一つとしてヒットしないことに深く悲しんだ。

11年間自カプを追いかけて、見つけた同カプ者はあのサイトの管理人様を含めてたったの2人だけだった。ちなみにその2人はどちらも現在インターネット上での活動は確認できず、あのサイトも何年か前から検索にすら引っかからない。
どうにか布教できないものかと原作を求めてAmazonやら古書店やらをよく覗いたが、何度調べても見つけられるのは常にKindle版だけだった。彼らを知るにはまず第一部の6巻から、というのが私の信念なのだが、恐らく第一部は絶版になっているのだと思う。第二部の完結ですら10年近く前のはずなので仕方ないといえば仕方ないが、ジャンルの古さを少しばかり恨んだ。

 

だからつい先日二人のキャラ名を並べて検索をかけた時も、脳裏をよぎったのは期待ではなく「どうせ誰もいないんだろうなあ」という諦めだった。
開拓する努力をせずして何を、と思われても仕方ないが、本当にそのくらい自カプには人の気配がなかったのだから許してほしい。
自カプがマイナーだなんてことは、数年間定期的に思いつく限りのキーワードで検索をかけ続けた私が一番よく知っている。
きっと今回も自分のツイートと全く関係のない他ジャンル関連のツイートが引っかかるだけだ。

 

けれど違った。
Twitterの検索画面をぼんやりとスクロールしていた私は、夜中だというのに変な声を出して飛び上がった。

 

自カプの話をしている人間が、確かにそこにいた。

 

しかも3人もいた。0人がいきなり3人になったのだ。正直気が狂うかと思った。
半泣きで友人に長文のLINEを送り付け、勢いに任せて彼らのもう一つのバイブルであるスピンオフ作品をAmazonで購入した。1冊持ってるのに。
どうやらこのスピンオフ作品の2巻が発売された影響で若干ではあるがジャンルに人が戻ってきているらしい。もちろん2巻も躊躇わずにAmazonで注文した。

 

さらに信じがたいことに、あれだけ見つけられなかった原作がAmazonに出ていた。中古ではあるが、第一部第二部ともに全巻セットで信じがたいレベルの大安売りをされている。正気か。在庫があるならもっと早く出してほしかった。
これも近いうちに買うつもりなので、友人各位は今のうちに私の布教活動の犠牲になる覚悟を決めておいてほしい。

 

長々と書いてしまったが、もしこのクソ長文ブログを読んでくれた心優しいオタクの中に自カプがマイナーで苦しんでいる女がいるのなら、決して希望を捨てないでほしい。
私の自カプは私が生まれるよりも前に刊行された特に有名なわけでもない作品の、流行ったわけでもないカップリングだったが、今になってようやくこうして同カプ者を見つけることができた。しかも3人も。
自カプが大丈夫だったのだから、あなたの自カプもきっと大丈夫だ。